3、ご 意 見 を 頂 戴 し て
 
東京大学大学院経済学研究科  柳川範之


 このたびは、私が参加しました部会の報告書並びにそこでの提言につきまして、重要なご意見・ご指摘を賜り、誠にありがとうございます。父が日頃からお世話になっている方々から、このようなご意見を頂戴するのは感無量であり大変有難く思っております。本来であれば個別にそれぞれの論点についてお答えをすべきかと存じますが、それでは長くなってしまいますので、全体を通したお答えと補足をさせて頂ければと存じます。

 まず、40歳定年制の意味ですが、「定年」という言葉からどうしても40歳でリタイアを強制されるイメージを抱きがちです。が、決してそういう趣旨ではありませんし、40歳以降非正規雇用となるわけでもありません。通常いわゆる正規契約とされている期限の定めのない雇用契約の期限を20年とみなして、それ以外の雇用パターンが必要な場合には、たとえば契約で40年と雇用期間を明記させ、契約の多様性を確保しようというものです。
 それによって、今よりも多様な働き方が容易になります。また20年の標準的な区切りができることで、これから必要となる知識や技能を身につける学び直しの機会をそこに積極的に組み込むことが可能になります。そして、そのような働き方・学び方にすることにより、むしろ今よりも長く75歳までしっかり働けるような社会にすることを提言しています。

 人口減少と少子高齢化が急速に進む我が国においては、働ける人々が出来るだけその能力を発揮し、より良い働き方をしていかない限り、支えるべき人達も支えられませんし、国自体がもちません。しかし、企業内でそのような能力開発と適切な働き場所の確保を行うことには限界が来ています。それは、
(1)企業は倒産してしまうリスクがあるし、
(2)新卒段階で能力や適性を見極めるには限界があるし、
(3)社内だけでは、適切な働き場所を与えられるとは限らず、
(4)また能力開発のできる分野も限られているからです。したがって、我が国が今後生き残るためには、企業を離れた形で、もっと必要な能力開発が40歳前後で行われ、もっと多くの人が望ましい働き場所を得られるようにする必要があると考え、このような仕組みを提言した次第です。







 もちろん、そのためには教育システムの充実等多くの先に整えるべき条件があり、それらを抜きに定年を引き下げよと提言しているわけではありません。むしろそれらの必要性を訴えるのが提言の内容になっています。ただし、それらの条件整備についての詳細プログラムが現段階で作られているわけではなく、それが今後の重要な課題であることはご指摘の通りです。とはいえ、条件が整わないことを理由に必要な改革が行われない事態だけは避けたいと考えています。大事なことはゴールを明確にし、そのために必要な条件や環境を早急に整えることだと思います。現状が変わることを恐れるあまり何も変えなければ、我々は根本的な安心すら失ってしまいます。そうなってしまう前に手を打たなければなりません。

 報告書の書きぶりについては、記述の仕方やデータ、具体的な政策実行プロセスに関する記述等ご批判を頂きました。たとえ有識者がまとめたものとはいえ、政府内から報告書を出すにあたってはさまざまな制約がかかります。そのことの限界について悩んだ時期もあったのですが、結果的にはこのような形で皆様方に取り上げて頂き、大変ありがたく思っております。
 しかしながら、どんな提言も、何らかの形で実行されなければ絵に描いた餅です。報告書を出しただけでは、現実を変えられないことも重々承知しております。政局が不安定な中、どんな政策プラン、改革案もなかなか実行が難しいのが現状ですが、少しでも良い方向にもっていけるよう努力して参りたいと考えております。今後ともご指導ご鞭撻を賜れれば大変幸いに存じます。

















                                         望洋会TOPページへ